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笹瀬 雅人; 岡安 悟; 倉田 博基; 北條 喜一
Journal of Electron Microscopy, 51(Supple), p.S235 - S238, 2002/00
照射イオンの電子励起によるエネルギー損失(-dE/dx)と円柱状欠陥の大きさとの関係を調べ、Time Dependence Line Source モデルにより円柱状欠陥生成に必要なエネルギー付与量を計算した。その結果、照射エネルギーの増加とともに電子励起によるエネルギー損失量が増加して、生成した円柱状欠陥の直径が8.4nmから16nmに増加することが明らかとなった。また、TEM観察の結果と電子励起によるエネルギー損失量をもとに、Time Dependence Line Sourceモデルにより円柱状欠陥生成に必要なエネルギー付与量(=電子励起によるエネルギー損失量)を計算した。その結果、イオン照射により付与されたエネルギーの1/3が円柱状欠陥生成に寄与していることが明らかとなった。
笹瀬 雅人; 岡安 悟; 倉田 博基; 北條 喜一
Physica C, 357-360(Part.1), p.497 - 500, 2001/09
酸化物高温超伝導体に導入された円柱状欠陥は、磁束のピン止め点として有効に作用し、実用化にあたり重要な特性である臨界電流密度の向上を促すことが報告されている。われわれは、最適サイズの円柱状欠陥を導入できる照射条件を求めるために、円柱状欠陥の形状及び微細構造を電顕観察し、イオンの照射条件(エネルギー損失量Se,速度)と円柱状欠陥形状との関係を検討した。その結果、Seを求めることでイオン照射欠陥の形状を実験的にほぼ制御可能であることを証明した。しかし照射イオンの速度依存性を調べた結果、=2.010cm/sec以上では、速度の増加とともに円柱状欠陥の大きさが増大するが、=2.010cm/sec以上では、速度に限らす円柱状欠陥の大きさはほぼ一定であることが示された。すなわち円柱状欠陥の形成には、従来から言われているSeだけでは十分に説明できない、いくつかの複雑な要因が関与している。
岡安 悟; 笹瀬 雅人; 黒田 直志; 岩瀬 彰宏; 数又 幸生*; 神原 正*
Physica C, 357-360(Part.1), p.501 - 504, 2001/09
溶融法で作製したイットリウム系高温超伝導体(QMG-YBCO)の強いピン止め特性を調べるため、照射により異なる2つのタイプのピン止め欠陥を導入し、ピン止めにおける照射効果の違いを比較した。プロトン照射では結晶のユニットサイズ(~直径15Å)程度の欠陥が試料に導入され、すべての動作温度域で1テスラの磁場付近でピン止め特性が改善された。3.5GeVのXe照射では試料内に直径10Å程度の円柱状欠陥が導入された。この欠陥は強いピン止め効果を期待されたが、もともと強いピン止め力を有するこの系ではあまり効果はなかった。しかしながら転移温度近傍の高い動作温度でピン止め力が回復する現象が観測され、円柱状欠陥によるピン止め力が高温で有効であることが示された。いずれの場合も、基本的なピン止め特性は、試料中にランダムに分布するY211の析出物が支配していることが明らかになった。
笹瀬 雅人; 佐藤 高広*; 岡安 悟; 倉田 博基; 北條 喜一
Advances in Superconductivity XII, p.314 - 316, 2000/00
重イオンによる固体中でのエネルギー付与は、高エネルギーで高密度電子励起により、低エネルギーで原子変位により行われる。金属の場合電子励起は損傷形成に寄与しないが、半導体や絶縁体、超伝導体で円柱状欠陥を形成する。特に酸化物高温超伝導体の場合、この円柱状欠陥が磁束のピン止め点として有効に作用し、Jの向上を促す。酸化物超伝導体中に形成される円柱状欠陥の形成機構を明らかにするために、照射イオンのエネルギー付与量(dE/dx)の効果を電顕観察により調べ、観察結果の理論的な考察をTime Dependence Line Source Model (TDLSM)により行った。その結果、照射エネルギーの増加とともに、円柱状欠陥の直径が8.4nm~16nmに変化した。この電顕観察結果とTRIMコードにより計算したdE/dxをもとに、TDLSMにより円柱状欠陥生成に必要なエネルギー付与量を計算した。イオン照射により付与されたエネルギーの1/3が円柱状欠陥生成に寄与していた。
岡安 悟; 黒田 直志*; 岩瀬 彰宏; 神原 正*
Advances in Superconductivity XI, p.287 - 290, 1999/00
3.5GeVの高エネルギーイオンを照射し円柱状欠陥を導入したQMG-YBCO(溶融法で作製したY系超伝導体)の超伝導特性の変化を調べた。この試料はもともと多くのピン止め中心を含んでいるため臨界電流密度に顕著な差は出なかったが、磁化の緩和に大きな違いが出た。40~50Kの温度において照射量に相当する磁場(B=2ステラ)以上の磁場で一旦進んだ緩和が元に戻る現象が見られた。これは磁束ピン止めのホストがもともと存在している析出物から、照射により導入した円柱状欠陥に変わったためと考えられる。この物質は大きな磁化緩和で知られているが、この場合は高い磁場でも緩和が押さえられる。
土屋 良重*; 花栗 哲郎*; 安田 英彰*; 前田 京剛*; 笹瀬 雅人; 北條 喜一; Steel, D. G.*; Lee, J. U.*; Hofman, D. J.*
Physical Review B, 59(17), p.11568 - 11574, 1999/00
被引用回数:8 パーセンタイル:45.66(Materials Science, Multidisciplinary)円柱状欠陥を含むBiSrCaCuOyの磁束液体面における異常な振る舞いをジョセフソンプラズマ共鳴と直流磁化を用いて研究した。その結果、磁束液体相の境界は磁場温度平面上ではほとんど水平、つまり温度依存性をもたないことがわかった。これは磁束液体相のカップリング相転移が磁場によって引き起こされる現象であることを示唆している。また、カップリング磁場B直下の磁場Bにおいて、面内の臨界電流の増大と面間位相コヒーレンスの急激な減少が同時に起こっていること、B,Bといった異常の起こる磁場はBよりもかなり低いことなどが観察された。これらの点は円柱状欠陥のTEM観察結果から得られた欠陥分布の不均一性が関係していると思われる。